モーリタニアではじめてのラクダ乗り (1997年)
しかしガイドのおじさんはずっと私の前を歩き、私が乗っているラクダを引っ張っていく。これは変だと思い、どうして彼がラクダに乗らないのかと聞くが言葉が通じない。後でわかったのだが、遊牧民は短い距離ならラクダに乗らないし、これは普通のラクダ乗りツアーなのだ。実は、チンゲティのオアシスをぐるぐる回って散歩していただけだった。
朝、2頭目のラクダが担ぐ食料で朝食をゆっくり食べ、また荷物を積んで、2時間ほど移動すると、どこかの日陰に止まってキャンプし、昼食を食べてから昼寝をし、また夕方2時間歩く。緑があちこちにある中途半端な砂漠の風景が続き、景色がまったく変わらない。地平線が見える砂丘に行きたいとガイドに言うと、それは遠すぎるという。待ちに待った砂漠の旅はこれで終わるのか。自分も何も変わらないような、がっかりした気分だった。
すると、地平線にラクダに乗った男の姿が現れた。たったひとりで砂漠を旅するベドゥインがラクダに「ホッ! ホッ!」と叫びながら、早足でこちらのほうに走ってきた。まるで砂漠の王様のような彼が、ラクダの上からガイドに手を伸ばして挨拶した。そしてターバンの隙間から突き出す鷹のような目つきで、私を見つめた。ラクダの上の私のだらしない姿に笑ったように見えた。そして、無言でラクダの手綱をガイドから引っ張って取り、それを私の両手に差し入れた。自分で手綱を持ってひとりでラクダに乗れ、と言うことなのか。彼は黙ったまま、ラクダに乗って去った。私は電気ショックを受けたようにしばらく凍りついた。この未知のベドゥインは、私に、しっかり手綱を握り、自分の人生は自分で導くべきだと伝えたかったのではないか!
「トゥアレグ、自由への帰路」
第1章、「砂漠との出会い」。写真はパリダカールラリーのパイロットたちと一緒にラクダ乗り散歩!
サイン会: 3/16 日
https://sahara-eliki.org/2022/02/27/出版記念パーティ/
出版:3/17 日